冷酷執事の甘くて危険な溺愛事情
「な、なんて……?」
「……あの婚約者と会ったんだって?」
埜夜くんの手がわたしの背中に回って、そのままゆっくりベッドに押し倒された。
「い、いきなり還琉くんがお屋敷に来て、ふたりで出かけただけで」
「ほんとにそれだけ?」
「それ……だけ。還琉くんとは何も――」
なかったわけじゃない。
ただ、わたしの気持ちが埜夜くんに向いてるのは変わらない。
でも、それを伝えていいのか迷ってしまう。
「還琉くんの真剣な想いを聞いたの」
「…………」
「でもわたしは……」
「今はゆずの口から聞きたくない」
「んっ……」
先の言葉を止めるように、唇が塞がれた。
同時に……切なそうに歪んだ埜夜くんの顔が映った。
ただ触れてるだけのキス。
なのに、触れてる唇が異常に熱く感じて甘い。