冷酷執事の甘くて危険な溺愛事情
そんなの期待しちゃうよ。埜夜くんの特別が、わたしだけなんじゃないかって。
「柚禾ちゃんは幸せだねっ。それだけ大切に想ってもらえて!」
いつの間にか欲張りになっていた。
埜夜くんのそばにいるのも、埜夜くんが特別だって思う相手も……ぜんぶわたしだったらいいのにって。
* * *
お屋敷に帰ってきて、時刻は夜の九時を回った頃。
「ゆずと過ごすの久しぶりに感じる」
「そ、そうだね。二週間って結構長かった気がする」
「俺がいなくて寂しかった?」
冗談っぽく聞いてくる埜夜くん。
「埜夜くんは……?」
「俺が聞いてんだから答えて」
ぜったい言わせるって瞳をしてる。
誘うのだって、甘く引き込むのだって、埜夜くんにとっては簡単なこと。