冷酷執事の甘くて危険な溺愛事情
好きって言えない、この距離感がもどかしく感じる。
「……なんでそういう顔すんの」
もう一度ため息をついて、少し困った顔をしてる。
「ほんと危機感なさすぎ」
見つめ合って数秒、埜夜くんの表情が崩れた瞬間、ふわっと抱きあげられた。
優しくベッドの上におろされて、埜夜くんと距離が近いのは変わらない。
「俺に何されても文句言えないってわかってんの」
ベッドがギシッと軋む音と同時に、埜夜くんが真上に覆いかぶさってきた。
ゆっくり顔が近づいてきて、唇が触れる寸前でピタッと止まった。
「埜夜くんに触れられるのは、嫌じゃないよ」
「はぁ……ゆずは俺のことどうしたいわけ」
「わかんない……」
「大胆で無自覚なの、ほんとどうにかして」
揺れる熱い瞳、触れる甘い体温。
ドキドキして、身体が熱くなってくる。
キスするの……かな。
ギュッと目をつぶると、ふにっとやわらかい感触が唇に触れた。
「ん……っ?」
前にキスした感じと、ちょっと違う。
唇が触れてる感覚じゃない。
つぶっていた目をゆっくり開けると、さっきと変わらず埜夜くんの顔は近い。
「……キスされるって期待した?」
「ずるい……」
埜夜くんの人差し指が、わたしの唇に触れてた。
「……今はしない」
やっぱりわたしのこと好きじゃないから……?
触れてもらえないのが、もどかしく感じるの……変なのかな。