冷酷執事の甘くて危険な溺愛事情
思い出の場所……か。
たくさんありすぎて、パッと思い浮かばない。
でも、特に思い出深いのは、やっぱりお父さんとお母さんが関わる場所かな。
「この勝負、ほぼ僕の勝ちですね。僕のほうが幼い頃から柚禾との思い出はたくさんあるんで」
「さあ、それはどうかしら? それじゃあ、ふたりともいったんここから出ていって、それぞれで考えてね。羽澄さんはこのままここに残ること」
こうして、ふたりとも理事長室から出ていった。
埜夜くんは何も言わなかった。
ただ、今は埜夜くんを信じたい。
「不安かしら?」
「信じるって決めた……ので」
「そう……。あなたが信じたいと思う人を信じなさい。誰かの幸せを考えるのも大切だけれど、あなた自身が幸せになるのをいちばんに考えることが大切よ」