冷酷執事の甘くて危険な溺愛事情
「家族で過ごした時間がいちばん長くて、たくさんの思い出が詰まった場所は、ここしかないと思いました」
「そうなのね。羽澄さんのご両親の想いが、この場所にあなたを引き寄せたのかもしれないわね」
幼い頃に住んでいた家だから、たぶん埜夜くんは知らない。
還琉くんは何度か遊びに来たことはあったけど……。
埜夜くんにとっては不利な条件かもしれない。
すると、理事長さんのスマホが鳴った。
誰からだろう?
今のところ、ふたりの姿は見えてない。
「……そう、桔梗くんが選んだ場所はそこね。それじゃあ、少しそこで待っててくれる?」
電話を切って、理事長さんがわたしを見た。
「桔梗くんはここには来ないわ。別の場所にいるみたいだから、わたしが迎えに行ってここに連れて来るわね」