冷酷執事の甘くて危険な溺愛事情
羽澄家を継ぐことが決まった日からずっと――わたしのそばには埜夜くんがいてくれた。
もうこれ以上、大切な存在を失いたくない。
それにきっと、埜夜くんなら――わたしの想いに応えてくれるって信じてるから。
「柚禾」
後ろから聞こえた声を聞いた瞬間、じわっとまぶたが熱くなった。
振り返ると、たしかに埜夜くんがいた。
信じていた気持ちが届いたんだ。
気づいたら瞳に涙がいっぱいで、気持ちが抑えられなくて埜夜くんの胸に飛び込んでいた。
「俺を信じてくれてありがとう」
「わたしのほうこそ、見つけてくれてありがとう」
埜夜くんは、この場所を知らないかもしれないと思っていたから。
「どうしてここだってわかったの……?」
「柚禾が両親と一緒に過ごした時間がいちばん長かった思い出の場所だろうから」