冷酷執事の甘くて危険な溺愛事情


「埜夜くんが好き、だいすきなの……っ、だから――」


まだたくさん言いたいことあったのに。


一瞬、うれしそうに笑う埜夜くんの顔が映って……ふわっと唇が重なった。


え……えっ?

なんでキス……?

頭の中がもうパンク寸前。


「……ほんとゆずってやることぜんぶ可愛い」

「わ、わたし真剣なのに」


「うん、俺めちゃくちゃゆずに愛されてるね」


なんで埜夜くんにこにこ笑顔なの。

わたしはこんな必死なのに。


「可愛い……俺だけのゆず」

「んっ……」


またとびきり甘いキスが落ちてきた。


そして――。


「……もう少しだけ待ってて」


離れるのを惜しむように、ゆっくり唇が離れていった。


「埜夜くんは気持ち教えてくれない……の?」

「まだ……ね。帰国したらぜんぶ話すから」


気持ちを隠されたまま。


< 208 / 242 >

この作品をシェア

pagetop