冷酷執事の甘くて危険な溺愛事情
「……ゆ……ず。ゆず」
「……ん」
「柚禾」
ん……? あれこの声……。
ぼんやりする意識の中、ゆっくり目を開けると。
「ただいま、柚禾」
「うぇ……や、やよくん……っ?」
寝起きで頭うまく回らないし、久しぶりすぎて、いま埜夜くんが目の前にいるって実感がわかない。
「ほ、ほんとにほんとに埜夜くん?」
「そうだよ。ごめん、寝てるところ起こして」
「これ夢とかじゃない……?」
「夢じゃないよ。遅くなってごめん」
思わず埜夜くんの胸の中に飛び込んだ。
離れていた時間を埋めるみたいに、強く抱きしめてくれる。
「ずっと柚禾の顔が見たくて声が聞きたかった」
「わたしも、寂しかったよ」
離れていた期間は、たった二週間。
でも、わたしにとってはそれがすごく長く感じて。
今こうして触れ合ってるのに、もっと近づきたいって思っちゃう。
なのに、睡魔はお構いなしに襲ってくる。