冷酷執事の甘くて危険な溺愛事情
それに、おじいちゃんが言ってた。わたしを後継者として認めない人もいるかもしれないって。
後継者争いは結構厄介で、きれいごとばかりの世界じゃない。
だから、そういうのをぜんぶ跳ね返せるくらい……わたしが後継者として立派になった姿を見せてほしいって。
真っ暗な部屋にひとりでいると、少し心細くなる。
埜夜くんは専属の執事だけど、寝るときは同じ部屋にはいない。
屋敷の中に使用人が使う部屋があって、埜夜くんはそこにいるから。
ベッドに入って目を閉じても全然眠れない。ひとりになると、いろいろ考えてしまう。
新しい環境でうまくやっていけるか、不安で胸がいっぱいになる。
「っ……」
わたしのそばには誰もいない。
平気だって言い聞かせていたけど、やっぱり寂しくて。