冷酷執事の甘くて危険な溺愛事情
握っていた拳をゆっくり下ろして、つかんでいた男の子の腕もパッと離した。
それから三人組はかなりおびえた様子で、足早に去っていった。
「柚禾」
「は、はい」
いつもの〝ゆず〟って呼び方じゃない。
さっきの埜夜くんの様子も含めて、これは相当怒ってるかもしれない。
「……なんでひとりで抜け出した?」
「ご、ごめんなさい。気分転換でちょっとひとりで出かけたくて……」
まさか、埜夜くんにこんな心配をかける事態になるとは思わなくて。
「頼むからいきなり俺のそばからいなくなんのやめて」
優しく抱きしめてきた埜夜くんの身体は、少し震えてた。
それに、手が真っ赤になって少し血が出てる。
「ほ、ほんとにごめんなさい。埜夜くんに迷惑かけてケガまでさせちゃって……」