冷酷執事の甘くて危険な溺愛事情
「柚禾。よく来たな」
白髪で、袴を着た厳格な雰囲気を持ち合わせた人。
この人がわたしのおじいちゃん……?
「そこに座りなさい。今日ここに柚禾を呼んだのは大事な話をしたくてな」
近くにあったソファに腰を下ろすと、テーブルを挟んでおじいちゃんが座った。
「わたしのことは聞いたか?」
「おじいちゃんってことだけは」
「そうか。いきなりすまなかったな。本来ならわたしが直接迎えに行きたかったんだが、足が悪くてな」
たしかに少し足を引きずっていて、杖をついている。
「しばらく見ない間に大きくなったな」
優しく笑った顔が、どこかお父さんと重なる部分がある。
「こうしてしっかり顔を合わせることもなかったから、戸惑うのも無理はない。柚禾が本当に小さかった頃、数回会ったくらいだからな」
そっか。小さい頃には会ったことあるんだ。
でも、あんまり覚えてない。