冷酷執事の甘くて危険な溺愛事情
わたしのそばにきて、そのままギュッと抱きしめてくれた。
やっぱり埜夜くんは、どんなときでもわたしをいちばんに助けにきてくれる。
ここ数ヶ月、埜夜くんと一緒にいて思ったの。
すごく大切にしてもらって、守ってもらえてるんだって。
きっと、埜夜くんなら……わたしのどんなピンチでも助けにきてくれるって、信じてる部分もあって。
信頼というか……これがお嬢様と執事の絆みたいな?
「埜夜くんだから……信頼できるのかも」
出会って一緒に過ごしてきた時間は、まだそんなにないかもしれないけど。
出会った頃よりも、埜夜くんとの距離は少しずつ近づいてる気がするの。
「ゆずにそう言ってもらえてうれしいよ」
「……埜夜くんは、どうしてわたしの執事になったの?」
今まで詳しい理由は聞いてこなかったけど、今ふと知りたくなった。
すんなり答えてもらえるかと思ったら、しばらく黙り込んだまま。
聞いちゃいけないこと……だったかな。
すると、ゆっくりわたしの身体を離した。
「ゆずが俺を――いや、なんでもない」
途中まで言いかけたけど、その先の言葉は聞かせてもらえず。
ただ――真っすぐで真剣な澄んだ瞳から、何か伝わってくるものがあって。
「ゆずを……いちばん近くで守りたいから」
この言葉の意味を理解できるのは、もう少し先のこと。