冷酷執事の甘くて危険な溺愛事情
「はぁ……それ無自覚? 止まんなくなるんだけど」
「っ⁉︎ と、止まって埜夜く――」
「……無理」
ひょいっと抱きあげられて、近くにあった窓のふちにゆっくり下ろされた。
この高さだと、わたしが埜夜くんを見下ろす体勢に。
「この角度のゆずもたまんないね」
「ぅ……唇触るのダメ……っ」
「ゆずがほんとに嫌ならやめるよ」
「っ、ずるい……そんなこと言うの」
ほんとに嫌だったら、こんな近くにいない。
きっと埜夜くんも、わたしが拒まないのをわかってる。
だから、甘く誘い込んでくるのがとってもずるい。
* * *
そんなこんなで迎えた舞踏会当日。
いま車で会場に向かってるところなんだけど……埜夜くんがいつもよりとびきりかっこいいの。