蜜月溺愛心中
「すごく嬉しいです!ありがとうございます!」

自然と顔に笑みが浮かぶ中、椿は清貴に頭を下げる。料理を誰かに作ることはあっても、誰かに作ってもらったのは初めてである。それがただ幸せで嬉しいと心の底から思えた。今までのような寂しさや惨めさなど、一ミリも椿の心にはない。

「……その、味は保証できないぞ」

「いいんです。清貴さんが一生懸命作ってくれたものなんですから!」

食べましょう、と椿は促して清貴を椅子に座らせる。自身も彼の前に座り、目の前で湯気を立てているチャーハンとスープを見つめた。

チャーハンのレタスとハムは不揃いに切られており、料理が得意ではないことが一目でわかる。卵も少し焦げてしまっており、わかめスープに入ったいる長ネギも切れていない部分がある。その料理を見て、椿は微笑んだ。

「あまり見ないでくれ」

恥ずかしそうに清貴は両手で顔を覆う。その指の隙間から、顔が赤くなっているのが見えた。椿は「すみません」と謝ってから続けた。

「すごく、嬉しいんです。清貴さんが私のために料理をしてくれたことが……。いただきます」
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