蜜月溺愛心中
椿はそう言ってから、チャーハンをスプーンで掬って口の中に入れる。初めて人に作ってもらった食事は優しい味がし、椿の心と体を温めていく。

「おいしいです」

椿がそう微笑むと、清貴は「ならよかった」とどこかホッとした様子でチャーハンをかき込むように食べる。しばらくは、スプーンが食器に触れる音しかリビングには聞こえなかった。しかし清貴が口を開く。

「そういえば今日、菜月と蘭がお前を見たと興奮気味にメッセージを送ってきた。会ったのか?」

「はい。私の職場に偶然買い物に来られて、互いに驚きました」

「そうだったのか。実は、菜月たちが「前は色々あってゆっくり楽しめなかったから、もう一度集まりたい」と言ってきたんだ」

「えっ……」

椿は食べる手を止め、清貴を見つめる。清貴が言う「みんな」とは菜月と蘭だけでなく、翔太と仁と新の男性陣も一緒なのだろう。男性陣が来ることに椿は全く抵抗感はなかった。しかしーーー。

「……姫乃さんも来るんですか?」

恐る恐る椿は訊ねる。人のことを悪く言いたくはないが、どうしても姫乃だけは椿は我慢できそうになかった。この想いを自覚してしまった今、姫乃が清貴に触れていたら自分が何をするかわからない。そんな恐怖が椿の中にはあった。
< 107 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop