蜜月溺愛心中
椿の瞳から、堪えていたものが零れ落ちた。



数日後の土曜日。菜月たちと会う日がやって来た。椿は鏡の前に立ち、着ている服がおかしくないかを確認する。

「椿、支度はできたか?」

「はい。……あの、服、おかしくないですか?」

今日椿が着ているのは、大きなリボンタイが特徴的な白いブラウスとネイビーのスカートだ。スカートのバック部分にはフリルが美しい放射線を描いており、アクセントに赤いリボンがつけられている。

椿をしばらく清貴は無言のまま見つめた。清貴の指が彼女の髪に触れる。びくりと肩を椿が揺らす中、清貴は言った。

「……おかしくない。自信を持ちなさい」

その顔は赤く染まっている。しかし、それは椿も同じだった。仕事に行く時とは違うカジュアルな清貴の服装に、胸を密かに高鳴らせている。

(菜月さんたちの前で、今度は堂々と清貴さんの妻として振る舞うことができる!)

それがただ嬉しく、しかしどこか恥ずかしい。何度も椿は清貴の後ろで手を胸元まで上げては下ろしていた。腕を組みたい、そう思ったのだが恥ずかしさからまだ家の中だというのに行動に移せない。
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