蜜月溺愛心中
「では、このカップがいいです」

数秒後、椿はピンクのコーヒーカップの前に立って笑いかける。清貴は「わかった。それに乗ろう」と言い、コーヒーカップの中に乗り込む。椿もコーヒーカップの中に乗り、腰掛けた。

「清貴〜！椿ちゃ〜ん！」

蘭の声が聞こえ、椿は声のした後ろを見る。椿と清貴の乗るコーヒーカップの後ろには、紫のコーヒーカップがあった。その中に蘭と仁と新が乗っており、こちらに手を振っている。

「蘭さん！仁さん！新さん！」

椿も手を振り返した。すると「ずるい！こっちにも手を振って〜！」と菜月の声がする。椿と清貴が乗るコーヒーカップの隣の黄色のコーヒーカップに、菜月と翔太が乗っている。椿は照れ臭さを感じながらも、二人の名前を呼んで手を振った。

「椿、律儀に手を振り返さなくていい」

「清貴〜！嫉妬深い男は嫌われるぞ〜？」

新がニヤつきながら言い、その隣で菜月が首を縦に振る。それを見て清貴の顔から笑みが消えた。

「お前ら、後で覚えておけよ」

刹那、アトラクションの開始時間を告げるベルの音が鳴り響く。いよいよ始まるのだ。椿の胸が高鳴っていく。

「このハンドルを回して動かすんですか？」

椿は目の前にあるハンドルに手を掛ける。清貴が「そうだ。目が回らない程度にな」と微笑み、椿と同じくハンドルに手を掛ける。

二人でハンドルを回していく。ハンドルを回すたびにグルグルとコーヒーカップが回っていき、椿の顔には花が咲いたような笑顔が浮かんだ。
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