蜜月溺愛心中
しかし、椿の不安は杞憂に終わった。清貴は姫乃を睨み付け、淡々と言い放つ。

「疲れるのは、遊園地だというのにそんな靴で来るからだろう。自業自得だ。腕は絶対に貸さないからな」

姫乃は水族館の時のようにヒールの高い靴を履いている。歩き回る遊園地には不向きな靴だ。

「姫乃。ヒールじゃなくて、シューズに履き替えてきたらどう?そしたら疲れることなく楽しめるよ」

新がそう提案したものの、姫乃は「シューズなんて嫌よ!ヒールじゃなきゃダメなの!」と大声で返す。清貴はそんな姫乃にまた淡々と言った。

「なら、「疲れた」とか口にするな。俺たちは遊園地を楽しみたいんだ」

清貴は姫乃に背を向けて歩き出す。腰に腕を回されているため、椿も清貴と共に足を動かす。チラリと振り返って姫乃を見れば、彼女は悔しげな顔を浮かべており、それを見て安堵している自分がいる。

(酷い言葉を姫乃さんは言われたのに、それにホッとしている私は性格が悪いんだろうな)
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