蜜月溺愛心中

「お前ら飲み過ぎだ！それと一旦黙れ！」

男性は肩を叩く手を叩き、睨み付ける。しかし、酔っ払って人に何を言っても無駄だ。さらに大声で笑い出し、男性の肩はさらに強く叩かれていく。

「お前、さすが医者！医者の鑑！」

「先生〜、診察してくださ〜い！」

まるで小学生男子のようなノリである。男性が険しい顔で何かを言っている。怒っているのだろう。しかし、椿は男性が何を言っているのか聞き取ることができなかった。

（なんか、クラクラする……）

そう思った刹那、椿の目の前が真っ暗になった。



頭が、体が、まるで岩の下敷きにされているかのように重い。椿が目を開けると、見覚えのない真っ白な天井が見えた。

「ここ、は……」

「病院です。あなたは仕事中に倒れて、救急車で搬送されたんです」

ベッドに横になっている椿に、焼肉屋で声をかけてきた男性が近寄って来る。男性は白衣を羽織っており、本当に医者なのだとわかった。

「初めまして。僕はここ柊総合病院の医者、柊清貴（ひいらぎきよたか）です。あなたの主治医です。よろしくお願いします」

「主治医？あの、私はただ倒れてしまっただけでは……」