蜜月溺愛心中
「姫乃さん。何かありましたか?」

椿は恐怖を感じながらも笑みを作り、ゆっくりと彼女の方を振り返る。姫乃は腕組みをしたまま椿を睨み付けていた。

「何であんたみたいな地味な女が清貴くんと結婚してるわけ?私の方がずっと彼に相応わしいと思わない?あんたなんて、私よりちょっと若いってだけじゃない!ムカつくんだけど!」

「ッ!」

詰め寄られ椿は後ずさる。姫乃はマニキュアが塗られた長い爪で自身の髪を触りながら続けた。

「私の方が先に清貴と会っていたのよ。清貴と高校生という青春を共に謳歌したわ。あんたが知らない清貴を私は知ってる。あんた、清貴の何を知ってるの?清貴の隣に相応わしい人間だって胸を張って言えるの?水族館や遊園地に来たことがない貧乏人のくせに!!」

姫乃の口から発せられる大きな声に、椿はびくりと肩を大きく震わせる。しかし、頭の中に清貴の顔が浮かんだ。彼は水族館の時とは違い、姫乃を突き放して椿が傷付かないようにしてくれた。

(私も、ちゃんと言わなきゃ!)
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