蜜月溺愛心中

「清貴さんはものではありません。一人の人間です。誰にも清貴さんを縛る権利はありません。ですが、私は、清貴さんを誰にも譲りたくありません。……いいえ！譲りません！」

「このクソ女！！」

姫乃が腕を振り上げた。椿は震えそうになる足を動かし、素早くお手洗いの外へと出る。しかし腕を掴まれてしまった。

「離してください！！」

「あんたが清貴と離婚するまで嫌がらせしてやるんだから！！清貴と結婚して、彼のマンションで専業主婦暮らしをして、幸せに暮らすのは私なのよ！！」

椿は腕を振り解こうともがき、姫乃は声を荒げながら椿を捕らえている手に力を込める。姫乃の伸びた爪が皮膚に食い込み、痛みに椿は顔を顰めた。その時である。

「何をしてるんだ！！」

姫乃が素早く手を離し、椿はその場に座り込んでしまう。そんな彼女の肩に温かいものが触れた。清貴の大きな手が肩を抱き締めてくれたのだ。

「姫乃、椿に何をした？」

「な、何もしてないわよ！」

「嘘を吐くな！なら何故、椿の腕から血が出ているんだ！」