蜜月溺愛心中
もう目を覚ましたので帰れるのでは、そう思った椿は体を起こすものの、清貴に肩を軽く押されて再びベッドに寝かされる。

「安静にしてください!あなたは重度の貧血と栄養失調状態なんです。あんなに動くことができたこと自体が奇跡のようなものです。しばらくは入院してもらいます。いいですね?」

それは有無を言わさない強い口調だった。椿は口を閉ざし、ただ首を縦に振る。

「明日から色々検査をしていきます。今日はもうゆっくり休んでください」

「……はい。お世話になります」

清貴は椿に微笑みかけた後、病室を出て行く。そのドアが完全に閉められ、一人きりになった椿はため息を吐く。窓の外を見れば、大きな月が空高く登っており、何時間も意識を失っていたことがわかった。

「どうしよう……」

しばらく働くことができない自分を家族は許してくれるのか、入院することになった自分を家族は心配してくれるのか、色々な心配と不安が胸の中に渦巻いていく。

数分ほど椿は不安を抱えていたものの、久しぶりに柔らかなベッドで横になったことであっという間に夢の中へ入り込んでしまった。
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