蜜月溺愛心中
ブランコ、滑り台、砂場など多くの遊具があるこの公園はそこそこ広く、子どもたちが走り回っているのを椿は何度か見かけたことがある。しかし、もう五時を過ぎているためか、帰って行く影はあれど、はしゃぎ声などは聞こえてこない。

「お母さん、今日のご飯は何〜?」

「今日はカレーだよ」

「やった!カレー大好き!」

「いっぱい食べてね〜」

椿の横を、親子が微笑ましい会話をしながら通り過ぎて行く。手を繋いで夕焼けが照らす中を歩いて行く後ろ姿を椿はぼんやりと見ていた。

(清貴さんとずっと一緒にいられたら、こんな話を私も子どもにする機会があるのかな……)

街を清貴と歩いている際、子どもと手を繋いだ親を見るたびに最近はそう考えることが増えた。人には口が裂けても言えない妄想を、まるで食事を取るかのように自然としてしまう。

(こんなことを考えてしまうのは、きっと……)

椿の頰が赤く染まる。それは夕焼けのせいか、それとも胸の高鳴りのせいか。その時だった。
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