蜜月溺愛心中
「椿。お疲れ様」

その低い声に耳がピクリと反応する。振り返れば清貴が手を振りながら走ってきた。椿も釣られて清貴に駆け寄る。

「清貴さん、お疲れ様です」

自然と互いの顔に笑みが浮かぶ。コンビニ店員は立ち仕事だ。足は仕事に慣れたとはいえ、疲れ切っているはずだった。その疲れが今、清貴の笑みを見ただけで軽くなっている。

「行こうか」

「はい……!」

椿に清貴が手を差し出す。その手に椿は迷うことなく自身の手を重ねた。互いの温もりが触れ、心拍数が上がっていく。

誰もいない静かな公園に、二人の長く伸びた影があった。



清貴の車に乗って揺られること数十分、二人が訪れたのは、椿にとって初めての外食となったイタリアンレストランだ。

「注文がお決まりになりましたら、こちらのベルでお知らせください」

席に案内された後、店員が決められた台詞を言い、頭を下げて椿と清貴の座るテーブルから離れていく。その様子をチラリと見た後、清貴がテーブルにメニュー表を広げた。
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