蜜月溺愛心中
ドリンクバーへと向かう途中、椿は職場であったことを清貴に話す。清貴から外食に誘われたことで胸が弾んでいたせいかもしれない。いつもより椿はどこか上機嫌で、よく話した。

「キャベツが湿布の代わりになるのか。初めて聞いたぞ」

「店長のおじいちゃんがやっていて、効果が意外にもあるらしいですよ」

このレストランで食事をしている多くの夫婦のように、普通に出会い、普通に恋愛をし、普通に結婚したかのようにこの瞬間椿は感じた。くだらない話で笑い合い、このまま当たり前のように「一緒にいられる日」が続いていく。そんな当たり前にこの手が触れたような、そんな気がした。

ドリンクバーの姿が椿の視界に入った時だった。パタパタと小さな足音が耳に入る。椿が目線を少し下に向ければ、そこには五歳と見られる男の子がこちらに駆け足でやって来るところだった。男の子の手には、ドリンクバーで入れたのであろうオレンジジュースの入ったコップがある。
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