蜜月溺愛心中
「処方箋が切れそうだから、明日また指示を入れておいてほしいって電話だった。ゆっくり椿とご飯を食べれるよ」

そう言って目を細める清貴は、どこか幸せそうな表情だった。それを見ていた椿の胸は高鳴り、自分の心にまで幸せが降り注いでいく。

「お待たせしました。ご注文のシーザーサラダです」

店員が注文していたサラダと分けるための小皿を運んできた。椿と清貴は店員にお礼を言い、サラダを分け合う。

「いただきます」

手を合わせ、フォークを手に取った二人は同時にサラダを口に入れた。刹那、椿の顔に満面の笑顔が咲く。

「おいしいです!」

椿がそう言うと、清貴も「おいしいな」と微笑む。サラダを食べていると、二人がそれぞれ頼んだパスタとチキンも運ばれてきた。

椿は清貴に結局聞こうと思っていたことを聞くことはなかった。モヤモヤする気持ちがなくなったわけではない。ただ、今はこの温かな幸せを噛み締めていたかったのだ。
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