蜜月溺愛心中
「おかえりなさい、清貴さん!」

玄関では靴を脱いだ清貴が笑顔を浮かべている。椿は清貴に笑いかけ、声をかけた。

「ただいま、椿」

その一言を聞くだけで、清貴の笑顔を見るだけで、椿の頬は赤く染まる。胸が苦しいほど高鳴り、幸せが溢れていく。

「いい匂いだな。今日の夕食は何を作ったんだ?」

「今夜はハッシュドビーフです」

「それは楽しみだ!」

「フフッ。たくさん食べてくださいね」

テーブルに並んだ料理に清貴は目を輝かせ、子どものような彼に椿は笑みを浮かべる。清貴が手を洗った後、椅子に腰掛け、二人は同時に手を合わせた。

「いただきます」

ハッシュドビーフを二人は口に入れる。トマトの酸味がふわりと口に広がっていく。うまく作れた、と笑みを浮かべる椿の前で清貴が言った。

「おいしい。すごくおいしいよ。……俺もこんな風に色んな料理を作れたらなぁ」

椿の胸に緊張が走る。医者という地位ある職に就き、椿一人の働きでは決して住むことのできない高層マンションの最上階に住んでいる清貴にできることが増えた気がした。しかし、それを口にするのは勇気がいる。
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