蜜月溺愛心中
(私みたいな人間が偉そうにって思われないかな?)

家族だった人たちに言われたことを思い出し、口が言葉を発するのを躊躇う。しかし、目の前で「おいしい」と笑顔で言いながら食べる清貴を見てすぐに椿はマイナスなことを考えるのをやめた。

(こんなことを考えている方が、清貴さんに失礼だ。清貴さんはあの人たちとは違う!)

スプーンをテーブルに椿は置き、緊張を誤魔化すようにゆっくりと息を吐く。そして清貴に提案した。

「清貴さん、私でよければ今度の休日に料理を教えますよ。SNS映えするようなおしゃれなものは作れませんけど、簡単なものならいくらでもお教えします!」

「えっ?いいのか?」

清貴の目が大きく見開かれ、そしてまた笑みがその顔に溢れていく。その笑った顔を見ていると、椿の顔に熱がブワリと集まる。

「清貴さん。私、私、あなたのことがーーー」

胸が高鳴る中、椿はいつからか心にあった想いを口にしようとした。その時ーーー。
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