蜜月溺愛心中
(早く体を治して、また働かないと……)

お金と働くこと、ただそれだけが彼女の頭の中にあった。



入院して二日目のことである。看護師の朝の検温と挨拶が終わった後、椿の枕元に置かれたスマホが鳴り始めた。電話がかかってきたようだ。

「お母さんから!?」

電話をかけてきた人物の名前を見て、椿の心臓が跳ねる。緊張と不安、そして僅かな期待を抱きつつ椿は電話に出た。

「……もしもし?」

すると、電話の向こうから怒鳴り声が響く。怒鳴っているのは由起子だけではなく、梓や智也までもが怒りを露わにしている。

『病院から電話がかかってきたわ!入院するなんてどういうことなの!?金が稼げず、むしろ逆に家族のお金を使おうとするなんて最低ね!この金食い虫が!』

『何?私にバイトをしろって言うの?私があんたの代わりに稼げって言うの?無理だから!こっちはあんたと違ってサークルとか色々あるの。バイトなんてしてる暇ないから!ほんっと使えねぇな!』

『俺は病気になってもお前のために金を稼いだんだぞ!それをちょっと貧血になったくらいでサボるのか?家族のために働くのはお前の義務だろうが!』
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