蜜月溺愛心中
「お前はこの家に戻って来て、微々たる金を稼ぐことと家事をしていればいい。梓の幸せを壊すな」

「この人だって、可愛い梓ちゃんの方がお嫁さんに来てくれた方が嬉しいわよ。あんたなんて、何の取り柄もないグズなんだから」

両親の言葉が棘となり、椿の心を貫いていく。暴力を振るわれたわけではない。それなのに今、椿の胸は誤魔化し切れないほど痛みを発していく。

(……この人たちは、「私」を見てくれることはないんだ)

そう思うと涙が溢れそうになる。しかし、椿は強く拳を握り締め、歯を食いしばる。三人に何を言われようとも、もう椿は「こんな私を清貴さんは必要としてくれない」と思うことはなかった。今までの彼の態度が、椿の全てを肯定してくれていると思ったためである。

「……嫌です!!」

腹の底から力を込め、「離婚しろ」と騒ぎ立てる三人に向かって椿は言う。その声は自分でも驚くほど大きく、部屋は一瞬にして静まり返った。
< 151 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop