蜜月溺愛心中
そんなリビングには今、青筋を浮かべて智也たちが一人の男性を怒鳴り付けている。首にカメラを掛けたその人に、椿は驚いて声を上げてしまった。

「新さん?」

清貴の友人である彼の名前を椿が言うと、その声に智也たち三人が驚いたように振り返る。その瞬間、梓が頰を赤らめた。

「あなたは清貴さん!その女と離婚して私と結婚しましょう?そんなブスより私の方がいいでしょ?」

そう言いながら満面の笑みを浮かべ、梓は清貴に近付いてくる。その後ろから由起子が「そうよ!あなたには梓みたいな可愛い子が相応しいわ!」と言った。椿は清貴の服の袖を反射的に掴んでしまう。それに気付いた清貴は頰を一瞬赤らめた後、冷ややかな目を梓たちに向けた。

「椿と別れてその人と結婚?何かの冗談ですか?」

淡々とした口調に、それまで笑顔だった梓の表情が固まる。由起子と智也が慌てて言った。

「梓は大学に通っていて、こんなにも綺麗だ。家事と小銭を稼ぐことしかできないそいつよりずっと医者の妻として相応わしい」
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