蜜月溺愛心中
「そうよ!梓ちゃんは街を歩けばすぐナンパされて、芸能事務所からスカウトされたこともあるし、女性としての美しさを保つためにネイルやエステも欠かさないわ。梓ちゃんの何が不満だと言うの?」

清貴は椿を三人から隠すように前へと一歩踏み出した後、椿と繋いでいる手に力を入れた。椿も釣られるように清貴の手を握り返す。手のひらにさらに熱が増した。

「……俺は椿と離婚する気はありません。椿と離れなくてはならないくらいなら、死んだ方がマシです」

そう清貴が言うと、梓はその場に崩れ落ちた。顔を手で覆いながら泣き始め、「梓ちゃん!」と言いながら由起子が駆け寄る。そして由起子は清貴を睨み付けた。

「あなた、梓ちゃんを振るなんてどういうこと?そんな女に騙されているだけだってまだ気付かないの?梓ちゃん、泣かないで。この人の目を覚まさせてあげるからね」

清貴は表情を変えることはなかった。リビングにカメラを手にしたまま立っている新をチラリと見た後、口を開く。
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