蜜月溺愛心中

「明らかに疲れているような見た目なのに、それでも椿は明るく笑顔で接客をしていた。そして、お年寄りがコーヒーマシンの使い方がわからなければ丁寧に説明していて、子どもがアイスを落としてしまって泣いていたら新しいアイスをサッと用意して慰めて、そんな優しい椿から目が離せなくなっていった」

「ずっと見ていたんですか、私のこと……」

聞いている椿はどんどん恥ずかしくなり、俯いてしまう。顔に熱が集まり、赤く染まっていった。

「だから、椿が倒れて家を追い出された時、不謹慎にも嬉しいと思ってしまった。強引に結婚できるチャンスが舞い込んできたと。……こんな卑怯な男で申し訳ない」

清貴が頭を下げる。すぐに「卑怯だなんて！」と椿は否定しながら顔を上げた。

「私は清貴さんと結婚できて、初めて家というものはこんなにも温かいものだと知りました。こんな私を必要としてくれて、とても嬉しかった。私、私は、清貴さんのことがーーー」

想いを伝えようとした刹那、椿の腕が強く引かれ、そのまま清貴の腕の中に閉じ込められてしまう。互いの心臓が大きく音を立てているのがわかる中、清貴が言った。

「好きだ。ずっと椿のことが好きだ。これからも夫婦でいてくれませんか？」