蜜月溺愛心中
朝食を食べていると、清貴が「椿」と不意に真剣な声で名前を呼ぶ。顔を上げれば、清貴はどこか緊張している様子だった。

「そろそろ、祖母に君を紹介してもいいだろうか？」

結婚をしてすぐ、椿と結婚したことを清貴は両親に報告していた。清貴の両親は今、学会発表のため日本ではなくドイツにいるためである。

『結婚をしたのなら、すぐにでも子作りをするように』

息子からの結婚報告に、彼の両親が言ったのはそれだけだった。その時の清貴は恐ろしさを感じるほど無表情だったことを椿は思い出す。

「最近、祖母の容体は少しよくなって面会も可能になった。今度の日曜日にでも紹介したい。いいかな？」

「はい。大丈夫です」

清貴の結婚の目的は、祖母を安心させるためである。椿が頷くと、清貴は安心したように笑った後、彼女の手を取る。

「それなら、今から日曜日に向けてデートしましょう」

「えっ？」

椿が首を傾げながら聞き返すと、清貴はどこか楽しそうに笑った。

朝食を食べ終わり、後片付けなどを済ませた後、椿は清貴に手を引かれ、車の中へと押し込まれる。
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