蜜月溺愛心中
決して乱暴に揺さぶったわけではない。しかし、謝罪以外の言葉を口にすれば次は何をされるのかわからないため、椿は頭を下げた。由起子はそれを見て「フン!」と鼻を鳴らしながら寝室を出て行く。
母に理不尽に怒鳴り付けられ、椿の心はまるで大きな岩でも乗せられたかのようにグッと重くなり、同時に体も重くなっていく。しかし、落ち込んだままではいられない。二歳下の今年大学生になった妹の梓(あずさ)を起こさなくてはならないためである。
両親の寝室の隣が梓の部屋だ。可愛らしいドアプレートが掛けられた部屋のドアを椿はノックする。
「梓、朝だよ。今日も大学で講義があるんでしょ?」
そうドアの外から声をかけるものの、中から返事はない。椿がドアを開けた瞬間、ムワリと甘ったるい匂いが鼻腔を一気に刺激し、吐き気が込み上げてきた。
ブランド物の服やバッグで溢れ、散らかっている梓の部屋には、いくつも香水の瓶がテーブルの上に並んでいる。その中の一つが倒れ、テーブルの上やフローリングの上に敷かれた真っ白な絨毯に甘ったるい海を作り出しているようだ。
(最悪……)
母に理不尽に怒鳴り付けられ、椿の心はまるで大きな岩でも乗せられたかのようにグッと重くなり、同時に体も重くなっていく。しかし、落ち込んだままではいられない。二歳下の今年大学生になった妹の梓(あずさ)を起こさなくてはならないためである。
両親の寝室の隣が梓の部屋だ。可愛らしいドアプレートが掛けられた部屋のドアを椿はノックする。
「梓、朝だよ。今日も大学で講義があるんでしょ?」
そうドアの外から声をかけるものの、中から返事はない。椿がドアを開けた瞬間、ムワリと甘ったるい匂いが鼻腔を一気に刺激し、吐き気が込み上げてきた。
ブランド物の服やバッグで溢れ、散らかっている梓の部屋には、いくつも香水の瓶がテーブルの上に並んでいる。その中の一つが倒れ、テーブルの上やフローリングの上に敷かれた真っ白な絨毯に甘ったるい海を作り出しているようだ。
(最悪……)