蜜月溺愛心中
(こんなにも嬉しそうな人を、私たちは今騙してるんだ……)

罪悪感が押し寄せる。そんな中、百合枝が「そういえば一番大切なことを聞いていなかったわ」と二人の馴れ初めを訊ね、清貴が息を吐くようにスラスラと答えていく。嘘と真実が混ざったドラマチックな出会いと交際に至るまでのラブストーリーである。

「本当に、椿と結婚できて幸せです」

「清貴さん!それは私の台詞ですよ」

今日何度椿は嘘を重ねただろう。わかっていた未来だというのに嘘を吐くことを辛いと感じている自分がおり、椿は戸惑う。数え切れないほど嘘を吐き、椿と清貴は病室を後にした。



病院を出て、椿は清貴の所有する車に乗り込む。その間、二人の間に会話はなかった。椿は罪悪感から口を開くことができず、ただぼんやりと前を見ながら歩いていた。

「椿、さっきからどうしたんだ?」

運転席に座る清貴が不思議そうな顔でこちらを見ている。彼は全く罪悪感を感じていないのだろうか。椿は薬指の指輪を見つめながら言った。

「……おばあ様に嘘を吐かなくてはならない。それが、この結婚の条件だとわかりきっていたはずでした。ですが、実際におばあ様と話していたら、その……」
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