蜜月溺愛心中
椿は口を途中だったものの閉ざす。そこから先を口にすれば、清貴の全てを否定してしまうと思ったためだ。

「そうだよな。椿は誰よりも優しい人だ。嘘を吐いておばあ様を騙してしまっていることが、辛いんだろう?すまない。こんなことをさせて。全部俺が悪いんだ。俺のせいだ」

椿の頭に温もりが触れる。清貴の大きな手が椿の頭を撫でていた。時間をかけてセットした髪が乱されていく。しかし、椿は何も言わないままワンピースのスカート部分を握り締めていた。

「……やっぱり、嘘はよくないな」

「おばあ様に本当のことを話しますか?」

椿は訊ねたものの、清貴は誤魔化すように曖昧に笑っただけだった。そして、どこか重くなってしまった空気を変えるかのように清貴は明るく言う。

「もうそろそろお昼だ。何か食べに行こう。どこに食べに行きたい?」

「お昼……」

椿はお腹に手を当てる。話に夢中になっていた気が付かなかったものの、お腹は空いておりお昼時なのだとわかる。
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