蜜月溺愛心中
椿はため息を吐きたくなるのを堪えながら、ベッドの上で眠っている梓の体を軽く揺さぶる。

「梓、起きて。大学遅刻しちゃうよ」

何度か声をかけていると、梓の目が開いた。刹那に体に触れていた手が叩かれる。

「汚い手で触らないでよ！ブスが移るじゃない！」

怒りながら目を覚ました梓も、この部屋の惨状に気が付いたようで、甘ったるい匂いの液体が染みてしまった絨毯を見て、「何よこれ！」と悲鳴に近い声を上げる。椿は呆れながら言った。

「片付けをしないからこうなるんだよ。整理整頓をして、ちゃんと香水の蓋を閉めていればこんなことにはならなかったと思う」

「この絨毯、すごく気に入ってたのよ！洗濯しときなさいよ！」

梓は椿を睨み付け、足音を大きく立てながら部屋を出て行く。甘ったるい匂いに包まれた部屋に残された椿は大きなため息を吐いた後、絨毯を外し、洗濯機へと放り込む。

（私もそろそろ朝ご飯を食べて出勤しないと！）

時計を見て椿は急いでリビングへと入る。しかし、リビングを見て椿は言葉を失い、その場に固まってしまった。
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