蜜月溺愛心中
どこかへ食べに行くと聞き、椿は考え始める。焼肉屋で働いていたものの、椿はどこかへ食べに行ったことは一度もない。

(いつも、外食に梓たちが行く時は私はお留守番だったから……)

どこのお店がおいしく、どこのお店にどのようなものが売られているのか、椿には全くわからず考え込んでしまう。椿が悩んでいることに気付いたのか、清貴は撫でる手を止めて言う。

「この辺りは飲食店も多いし、車を走らせながら決めるのもいいかもしれないな」

車のエンジンがかかり、ゆっくりと動き出す。病院を少し離れれば、清貴の言う通り椿の目に様々な飲食店が映る。ラーメン屋、うどん屋、ドーナツショップにハンバーガーショップ。お好み焼きや回転寿司もあった。

(ど、どうしよう……。こんなにたくさんあるとますます迷っちゃう……)

その時、椿の目に緑の看板が止まった。イタリアンのお店である。イタリアンと言っても、ドラマに登場するようなおしゃれな夜景が見える場所ではなく、ファミリー向けレストランだ。値段もリーズナブルで人気のレストランである。

(ここのドリアがおいしいんだって焼肉屋で聞いたことがある)
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