蜜月溺愛心中
水族館には綺麗な熱帯魚たちや可愛らしい海獣たちがおり、イルカショーや触れ合いコーナーなどを見ているだけで実家にいた頃、仕事や家事に疲れ切っていた椿は癒されていた。

(どっちも小さい頃、すごく行きたかった場所だ。それに今日、行けるの?)

少しずつ出掛けるという実感が湧いてきたのか、椿の胸がドラマや映画を見ている時のように弾んでいく。もしも同じ言葉を智也や由起子に言われていたのなら、何か裏があるのではと思っていただろう。しかし今、椿が目の前にいるのはーーー。

(清貴さん……)

目の前にいるのは、椿の決断を優しい目で見守ってくれている清貴である。その目には嘘や裏を感じない。ただ、「一緒に出掛けたい」という気持ちが伝わってくる。

「清貴さん、私ーーー」

初めての決断に声が震え、緊張してしまう。体は強張り、何故か不安も芽生えていく。そんな中、椿は自分の気持ちを伝えた。

「わかった。準備をしよう」

清貴は嬉しそうに笑い、食事の続きを再開した。
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