蜜月溺愛心中
(今日は、私も楽しめるんだ……)

クラスの中で自分だけが取り残され、そのことを陰であることないことを言われていたことがただ悲しかった。両親が梓に「修学旅行で着るように」と新しく可愛らしい服を買い与えられているのを見て、ただ虚しかった。その思いが今、報われるのだ。

『間もなく終点〜。京都〜京都です』

そのアナウンスが流れると、それまでぼんやりと景色を見ていた人も、スマホや本に目を通していた人も、深く椅子にもたれて眠っていた人も、下車する準備を始める。

「さあ、もう着くから俺たちも降りる準備をしよう』

「はい!」

二泊三日の京都の旅は、こうして幕を開けた。



京都駅を出て、椿は空気をお腹いっぱいに吸い込む。同じ日本とはいえ、東京と京都では空気や雰囲気が全く違う。騒がしく、どこか忙しない東京とは違い、京都の空気はどこか落ち着いていて、椿は旅行先を京都にしてよかったと思った。

コインロッカーに荷物を預けた後、椿は清貴に訊ねる。
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