蜜月溺愛心中
「清貴さん、今からどちらへ行くんですか?」

やはり定番の清水寺だろうか。それとも、修学旅行の観光スポットとして定番の二条城や金閣寺だろうか。目を輝かせる椿の手を、清貴は握る。

「それはついてからのお楽しみだ」

手を引かれ、椿は清貴と共にバスに乗り込む。バスに揺られること十五分。椿と清貴がバスを降りた先にあったのは、レンタル着物屋だった。多くの人が「楽しみだね〜」と言いながら中へ入っていく。

「えっと、ここは……」

「着物、一緒に着よう。着たことが一度もないんだろ?」

清貴はニコリと笑い、まだ理解が追いついていない椿を中へと誘導する。店内に一歩足を踏み入れるとスタッフが現れ、「柊様ですね。お待ちしておりました」と頭を下げ、二階へと案内される。着物は二階に置かれているようだ。

「こちらからお好きな着物をお選びください」

スタッフがそう言い、扉を開けた先にあった光景に椿は「わぁ……!」と呟いてしまう。椿の目の前にはハンガーに掛けられた色とりどりの着物たちがある。どれも柄が一つずつ違い、美しい。
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