蜜月溺愛心中
清貴と暮らすようになって食事を毎日三食食べられることが当たり前になり、結婚する前は骨が薄っすらと感じることができるほど痩せていたのだが、今は少し肉がついた。しかし、それでも周りにいる女性たちより膨らみはなく、自分の体に椿はため息を吐きたくなる。

(着物が似合う体じゃないから……)

椿が俯きかけたその時だった。視界に赤が広がる。清貴が着物を差し出していた。

「この着物、椿に似合うと思うんだが。どうだ?」

鮮やかな赤色の着物には、大きな白い椿の花がいくつも咲いている。椿は恐る恐る清貴の顔を見た。彼は、椿が着物を選ぶことができず苛立ったいるわけではなさそうだった。ただ穏やかな顔で着物を差し出す。

「私に、こんな綺麗な着物は似合うでしょうか?」

「ああ。椿にぴったりだと思う。この色も、花も、椿にぴったりだ」

椿は、着物を華やかにさせている自身の名前と同じ花にそっと触れる。冬に美しい花を咲かせる椿と同じ名前のため、「素敵な名前だね!」と言われることがあったものの、自分自身は名前負けしていると感じることが多かった。

花を指でなぞる椿の手の上に、清貴の大きな手が重なる。清貴は優しい声で言った。
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