蜜月溺愛心中
「椿の花言葉は、「控えめな素晴らしさ」「気取らない優美さ」そして「謙虚な美徳」だ。君はその名に相応わしい女性だと俺は思う」

「そ、そんなことないです……」

椿の頰が着物と同じ赤に染まる。自分の名前が花と同じだとは知っていたものの、花言葉までは知らなかった。止まることなく流れ続ける川のように褒められ、胸が高鳴っていく。

「そういえば、椿は色によっても花言葉が違っていたな。さっきのは赤い椿の花言葉だ。白い椿は確か……「完全なる美しさ」「申し分ない魅力」あとは、「至上の愛らしさ」だったか。でも、どちらの花言葉も椿にぴったりだと思う」

「き、清貴さん!恥ずかしいです!」

砂糖が振り掛けられたような甘い言葉に人々の視線が集まり、椿は顔が赤いまま清貴の手から着物を奪うように手にする。そのためスタッフと相談して帯は緑にし、髪飾りなどもさっさと決め、着付けと髪のセットをしてもらった。

「旦那様、とても素敵な方ですね。あんな人前でサラリと甘いことを言えてしまうなんて」

髪をセットしてもらっている間、スタッフが微笑みながら話しかけてくる。椿は「恥ずかしいです……」と言いながらも、心の隅では寂しさを感じていた。
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