蜜月溺愛心中
「一枚でもお金を抜き取っていたら、容赦なく家を追い出すからな」

両親は椿の視線に気付いたのか、鋭い目で睨み付けながら言う。椿は震える声で「はい」と答えるしかなかった。



結局朝食を作り直した後、椿は食べている時間などなく軽く身支度を整えて家を出る。梓が使わなくなった自転車に乗って職場へと向かった。

「ハァ……ハァ……」

少し漕いだだけで息が荒くなっていった。ここ最近疲れやすい。

「まだ仕事、始まってすらいないのに」

痛み始めた頭に触れ、椿は息を吐く。毎日仕事と家事に追われてゆっくり休む暇がないためだろう。自転車を押しながら歩く。

『家にはたくさん金を入れろ』

そう智也と由起子に言われているため、椿は昼間はコンビニで働き、夜は焼肉屋で働いている。何とか職場であるコンビニまで辿り着き、椿は商品の品出しをしていた店長や他の店員に挨拶をする。

「おはようございます。よろしくお願いします」

「おはよ〜……って大丈夫?顔色悪いよ?」
< 8 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop