蜜月溺愛心中
「あ、ありがとうございます。清貴さんもとても素敵で、とてもお似合いで、かっこいいです!」

椿の声は緊張と恥ずかしさから上擦ってしまった。それに気付き、俯いてしまう。しかし、それを気にすることなく清貴は椿の小さな手を取った。

「ありがとう。嬉しいよ。さあ、行こうか」

触れられた手は、いつもよりどこか体温が高い気がした。



椿は初めての下駄の動きづらさに戸惑いつつ、清貴と共に歩く。清貴が歩くスピードを合わせてくれているので、何とか隣を歩けている。

「清貴さん。これからどちらへ行きますか?清水寺ですか?」

「清水寺も行きたいけど、寄りたいところがあるんだ。先にそっちに行ってもいいかな?」

清貴の言葉に椿は大きく頷く。清貴は「椿もきっと気に入ると思う」と言った。どこに行くのだろう、と胸を弾ませながら椿はついていく。

湯豆腐の店やレトロチックなカフェの前を通り過ぎ、多くの観光客と思しき人とすれ違っていく。歩き始めて数分、「ここだよ」と清貴が足を止める。「巡礼通称寺」と赤い門に看板が取り付けられており、その先にはカラフルな玉が括り付けられた華やかな場所が一際目を引いていた。
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