蜜月溺愛心中
「ここ、は……」

椿は一歩前に進む。着物を着た多くの人が本堂に吊るされた色とりどりのお手玉のようなものを撮影しており、玉を購入して何かを書き込み、吊るしている人もいた。

「ここは八坂庚申堂。あのカラフルな玉はくくり猿と言って、あのくくり猿に願い事を書いて吊るすとその願いが叶うと言われているそうだ」

清貴がこの場所や玉のことを説明してくれた。椿は一歩ずつ歩き、くくり猿に近付いて行く。清貴の言う通り、玉には一つ一つ願い事が書かれていた。

『おじいちゃんの病気が治りますように!』

『家族みんなが健康に過ごせますように』

『就活がうまくいきますように』

『ゆーくんと結婚できますように!』

願い事に椿は目を通していく。日本語だけでなく、ハングルや英語で書かれているものも多くあり、この場所が観光スポットとして多くの人に認知されているとわかる。

「可愛い」

「俺たちも書かないか?」

椿が華やかなくくり猿を見つめながら呟くと、清貴にそう誘われる。くくり猿は一つ五百円とそれなりの値段がするものの、みんな旅の思い出にと買っている。

「はい。ぜひ、書きたいです!」

「あっちで買えるみたいだ。行こう」
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