蜜月溺愛心中
椿は黄色のくくり猿を、清貴は青いくくり猿を選び、野生ペンを借りる。椿は何も書かれていない綺麗なくくり猿を見つめた。

(私の願い事……)

着物を選んだ時のように、迷うことはなかった。椿の体はまるで何者かに操られているかのように、パンをくくり猿に走らせていく。

『清貴さんとずっと一緒にいたい』

そう自然と書いていた。書いた後、椿の顔に一気に熱が込み上げてくる。何故このようなことを書いてしまったのか、もっと他に書くべき願い事があったはずだ、と自分を責めてしまう。

(どうしよう……。ペンで書いたから消すことができない)

椿は両手でくくり猿を包んで隠し、どうしようかとウロウロとくくり猿が吊るされた場所を歩く。すると、願い事を書き終えた清貴と目が合ってしまった。

「椿はどんな願い事をしたんだ?」

清貴は笑みを浮かべながら訊ねる。椿はくくり猿を包む手に力を入れ、首を横に振った。

「な、内緒です!絶対に見ないでください!」

「そう言われると人は見たくなる生き物なんだが」

「見たらもうご飯を作りません!」

「それは困るな。俺は料理は苦手なんだ」
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