蜜月溺愛心中
清貴は笑い、くくり猿を吊るす。彼は何と書いたのか椿は気になったものの、自分も見せないのに清貴の願い事を見る権利はないと清貴から離れたところでくくり猿を吊るす。

(この願いは叶うのかな?叶うと、いいけど……)

吊るす手が少し震える。椿の頰は赤く染まっており、その横顔を清貴はジッと見ていた。



八坂庚申堂を出た後、二人は清水寺へと向かった。八坂庚申堂から清水寺までは離れておらず、十五分もかからないうちに到着する。

「有名な清水の舞台を見よう」

「はい!とってもわくわくします!」

京都を代表する観光地と言っても過言ではない清水寺は、お土産屋やカフェなどが軒を連ねている参道から多くの人で賑わっており、どの顔も笑顔で満ちている。椿と清貴の顔にも笑顔があった。

有名な本堂と舞台へ一歩ずつ椿たちは近付いていく。そして、舞台から景色を見た時、椿は言葉を失った。

東京のビルの群れは常に立派であり、日本の首都としての力強さを感じる。しかし、夕焼けに照らされた京都の街や山は、どこか儚く切なさを感じてしまう。それが言葉を失ってしまうほど美しい。

「綺麗だろ。ここに一度、おばあ様に連れて来てもらったことがあるんだ。その時にとても感動した。だから、椿とこの景色を見たかった」
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