蜜月溺愛心中
店長や店員が品出しの手を止め、椿に駆け寄る。それほど酷い顔をしているのか、と椿は自身の頬に触れた。

「体調悪いならもう休んでいいよ?」

「そうそう!椿ちゃん、いっつも頑張って働いてくれてるんだし、休んでもバチは当たらないよ!」

そう店員たちは言うものの、椿は「大丈夫です」と首を横に振り、コンビニの制服に着替えるためにバックヤードへ入った。

商品の品出しやレジでの接客などを椿は夕方まで行い、「お疲れ様でした」と店長たちに声をかけて体をふらつかせながらコンビニを出ようとする。それを店長が止めた。

「椿ちゃん、これから焼肉屋で働くんだっけ?」

「はい」

「もう今日は休んだ方がいいんじゃない?」

「いえ、大丈夫です。ありがとうございました」

店長の優しさに椿の目に熱い膜が張り、ツンと鼻が刺激される感覚を覚える。しかし、休むわけにはいかないのだ。椿はコンビニを出て自転車を押しながら歩く。

(このまま家に帰っても、お父さんたちから「怠け者」って怒られるだけだもんね)
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